2024年9月16日月曜日

衣食住そして薬

4月に親の里である愛媛に一人で行ってきた。実に40年ぶりである。

そこは佐田岬半島という細長い半島の先端で、

豊予海峡を挟んで向かいは大分、北は瀬戸内海、南は太平洋という温暖で風光明媚な所だ。


80歳を超えた叔父と叔母も会いたがってくれていて、

叔父自らが前日に潜って獲ってきてくれたサザエ、鮑、

叔母が漁協で詰めてきてくれたウニなど、

とても食べきれない量の海のおもてなしを肴に語り明かした。


幼少期には毎年夏休みを過ごしていた場所である。

そこはまさに「ぼくのなつやすみ」の世界だった。

私は幼少の記憶を頼りに従兄弟の住む離れた集落まで足を運んだ。


「あっちに行ってももう何にも無いぞ」という叔父の言葉を背に向かったのだが、

確かに何も無かった、いや正確には人の気配が無かった。

あの海水浴に行く途中にあった雑貨屋の建物も、石積みの壁も、お地蔵さんも、

往時の面影のままなのに人だけがいなかった。


唯一の診療所も長く勤めていた地元出身のドクターが引退され、

今は週2回ほど、一番近い総合病院からドクターが派遣される日だけ開いているそうだ。

「Dr.コトー」がいなくなってしまった状況だ。


兼好法師の言葉を借りるならば、

「衣食住」そして「薬」(今で言うと医療機関にあたるだろう)が揃って、

「豊か」と呼べる。

その一翼が欠けたこの町は、日本の他の田舎町と同じように衰退していくであろう。

漁船の数も減ったせいか、港湾内の水まで澄んで美しかった。


40年前までは「どこの子ね?」といつも尋ねられ、

親の名前を出せば「あ〜、あそこの!」とお決まりの会話が飛び交っていたものだ。

その親もあの世に行き、もはや親を知る者もいなくなっていた。

もう、この地に生まれ育った訳でも無い私にとってはここは只の過去に過ぎない。


私はここに再び来ることがあるのだろうか?

サイドウインドウからの余りにも美しい景色を眺めながらそんなことを考えていた。

郷愁を感じるのは、ルーツがあるからなのか、昔馴染んだ景色だからか?

千と千尋のように、今引き返しても、実はもう何も無いんじゃないかという感覚が残る。


道はやがて、よくある地方都市の景色へと変わり、

そこでようやく、発泡スチロールの箱にぎっしり詰め込まれた

アワビ、サザエの配り先を探さねばと我に帰る。


帰り際に、80越えの漁師が、「天然の生簀に置いておいた」

と船から山程海産物の入った籠を引き揚げ、

ニカっと笑いながら「お前のために獲ったんだから、全部持って帰れよ」

と渡されたのだった。

前日あれほど食べたのに…どんだけ獲ってんねん。


あの人が元気な間にまた訪れるのも悪くないだろう

…ノスタルジックに浸るにはまだ早かったようだ。





2024年9月7日土曜日

忙しいのは良いことだと言い聞かせる

最近ブログ更新してませんよねって言われることが多くなりました。

ただただ忙しいのと、こんだけサボっちゃうと筆が乗らないんですよね。

とにかく体調は良いです。


1月は、奈良で年越しして久しぶりに興福寺や東大寺に行ったこと、

あともう年賀状書かんとこうって決めた事を書くつもりだったのに、

そこをサボったせいでこんなになっちゃいました。


40年ぶりくらいに、親の郷里である愛媛県に行ったこと、

5年ぶりにカナダに行って感じたこと、など色々あるんですが、

年終盤に向け、小出しにしていきましょう。


真面目な話で行くと、

ここ1年で自己愛性パーソナリティ(NPD)についての学びを得ました。


以前このブログで、私に不誠実なことを働いた輩がいたことをチラッと書いたと思います。

彼がまさにそれで、その関連で知識を深めていったのですが、

一定数そのような人間は存在し、以前勤務していた病院のあのパワハラ上司も、

最近相談を受けた一件の相手も、間違いなくNPDです。


中高の同級生である精神科医に、

このNPDについてのお勧めの専門書は無いのか尋ねたのですが、

性格分類であり、治療対象となるカテゴリーではないようで、

案外と一般書の方が優れているとの見解でした。


早速、『他人を攻撃せずにはいられない人』(片田珠美著)を手に取り、

頭の整理がついたところで、皆さんにも理解しやすい好例が出てきました。


今話題の兵庫県知事です。彼はまさしくこれでしょう。


”自己愛性パーソナリティ障害患者は自分の能力を過大評価し,自分の業績を誇張する。自分が優れている,独特である,または特別であると考えている。”(MSDマニュアル)


身近なパワハラ、モラハラ問題にはこのパーソナリティが潜んでいるようです。

忠実な取り巻きを作り、少しでもプライドを傷つけられると執拗かつ陰湿に攻撃してきますので、

ターゲットにされたら大変なことになります。

(今回も追い詰められた方がお亡くなりました。)


本人は絶対反省、改心することはありませんが、

皆で協力し、白日の元で事実関係を晒すのが効果的だと思います。


同じようなことで悩んでおられる方は逃げる、離れる。

逃げられない状況の時(職場、親族など)は、

一人で抱え込まず、事実関係を積み上げて法律相談を受けてくださいね。


彼らの末路は?

”恥なくてよいことを恥じ、恥ずべきことを恥じない人々は、邪(よこしま)な見解をいだいて、悪いところ(=地獄)におもむく”(ブッダの真理の言葉・感興の言葉 中村元訳)

実際不思議なほど、みな孤独で不幸な晩年を過ごすことが多いそうです。

ブッダってやっぱ悟ってますね。








2023年12月29日金曜日

町中華好き

28日午前診にて、本年の診療が終了いたしました。

例年の最終日はかなり混雑するのですが、今年はいつもの木曜日と変わらない感じでした。

分散型の年末といった感じです。


いつもの木曜日は、このあと夕方から「スパ水春」に繰り出し、サウナ2〜3セットで整え、英気を養うというのが私のルーティーンとなるのですが、

今回初めて、隣にそびえる「ベイコート芦屋」に宿泊する機会を得ました。

キャンセル待ちが当たってとてもラッキーでした。


エントランスから異世界空間で、内部も噂に違わぬラグジュアリー、

スパで星空を見ながらジャグジーに浸かった日にゃ、

1年の終わりにご褒美をもらったようで、至極満足な体験が出来ました。

アメリカのヒップホップのMVみたいやなあと一人ニヤけておりました。

(もちろん、シャンパングラスやホットなお姉さんなどは用意されていません)


例えるならベイコートがレストランで、水春が町中華って感じでしょうか?

その上で町中華の良さっていうのも再認識しましたが…(風呂上がりに「マッチ」飲めるし)


ただ、水春からあれだけ見えているのに、ベイコートから水春は気にならない。


最近、国が国民の生活を顧みる素振りを見せないのは、本当には見ていない、

見えていないんだろうなとふと感じました。


何の話やねんって感じで1年を締めてしまいましたね、グダグダ。


とにかく本年もありがとうございました。

来年も皆様にとって良い年でありますようにお祈り申し上げます。

年明けは5日(金)から診療再開いたします。


芦屋の町中華クリニック 店主



2023年10月29日日曜日

教養と教育

ラグビーW杯決勝は歴史に残る名勝負でした。


日本代表も年々強くなっていますが、

(個人的には前回の方がバックスの展開力があったとは思ってますが)

もう、このレベルになると超人プロレスみたいですね。


上背の無い選手でも、かなりウェイトをつけて体をデカくしているのに、

俊敏性は変わらず、格好良いです。


それを見て、私も最近は食べまくっており、脱小食、

ノーリミットで秋の味覚を堪能しております。俊敏性は落ちています。


子が離れたせいで、夫婦二人で外食することが多くなり、

ちょっと雰囲気の良いお店も行ったりしています。

ここ2回ほど、それぞれ店は違うのですが、お隣の席が開業医の大先輩方で、

自然と会話を交わす機会を得ました。


一人の先生に、開業医としての引き際はどのように考えておられますか?

と会話の流れでお尋ねしたところ、

「まさに今それを考えているが、信頼して来てくださる患者さんがいる限りは続けたい」

とのお返事でした。なるほどですね。


そこで、一緒にいらした奥様が、

「歳を取ったら、教養(きょうよう)と教育(きょういく)が大事なの」

と笑いながら仰り、

「今日(きょう)用(よう)がある。今日(きょう)行く(いく)所がある。ってことよ」

とその真意を教えて下さいました。

「今更、家にずっとおられてもね…」…流石です。


そんな出会いもあるので、酒場はやめれないですねって、

W杯関係ない締めになってしまいました。


2023年7月17日月曜日

プラセンタかシャリキンか両方か

6月は祭日が無いため、1週間の行動パターンがほぼ一定となり、

コピーアンドペーストな日常に少し飽きておりました。


伸ばしていた髭も、食べ物が付着するのと、

鼻の下がモソモソする感覚が、もしや鼻毛が「コンニチワ」してるのでは⁉︎と

ナーバスになってしまう為、顎だけを残すスタイルとしました。


そして、梅雨明けも間近な7月、やっとやる気が出て、ブログ更新となった訳ですが、

皆様、夏バテ対策は万全ですか?


ええ、やっぱりプラセンタですね。

出荷停止1年間と言われていた「メルスモン」が、結局3ヶ月で停止解除となり、

以前のように接種できるようになりました。

あおりを受けていた別メーカーの「ラエンネック」も供給の問題が無くなりましたので、

日常が帰ってきた感じです。

(元々、効果にメーカー間の差異はありません)


プラセンタにはアミノ酸も多く含まれ、

疲労回復にはかなり効果ありなんじゃないでしょうか?

ホルモンはまだそこまで低下していない、閉経前の方に特にお勧めしています。

(閉経後はHRT(ホルモン補充療法)の方が効果てきめんです。)


私は痛いのが苦手なので、プラセンタはあんまり打ちませんが、

近所の新しい焼肉屋で飲める、シャリキン酎ハイの沼にハマっています。


シャリキンとは、キンミヤ焼酎という大衆向け焼酎を、

シャリシャリのフローズン状態にしたもので、

これに炭酸などの割材を加えると、味が薄まることなく酎ハイが戴けます。

関東の居酒屋文化スタイルですね。


「酒場放浪記」や「町中華でやろうぜ」なんていう、

オッサンが食べて飲むだけの番組を眺めてたら、

シャリキンホッピーとかバイスサワーとか聞き慣れない、見慣れないお酒が出てきて、

以前から気になっていたんですよね。


その店では特に「クエン酸サワー」(ラムネで割った感じの味)というのにハマっていて、

もう本当に沼ですよ。

絶対、流行るやろうなあと思ってたら、そこの支店が西宮にも出来てました。

阪神西宮にも沼出現。


楽天市場やAmazonでもパウチ状になったシャリキンは購入できるみたいですが、

やっぱり大衆居酒屋みたいな所で飲んだ方が雰囲気が出ます。

焼肉以外のものも合わせたいですしねえ…

夏にはピッタリかと。


ちなみに当院では、プラセンタのみでシャリキンの取り扱いはございませんので、

くれぐれもご注意ください。






2023年5月26日金曜日

Blue Giant

若いジャズサックスプレーヤーの成長譚を描いた人気漫画『BLUE GIANT』の映画が、もうすぐ公開終了という事で慌ててシネリーブル神戸へ行ってきました。

漫画なのに音が聴こえるようだと言われたほどの作品を、実際音を聴きながら鑑賞できるのはファンにとっては堪えられない感動でした。

ただ、観に行かれる方は絶対に原作を読んで行かれた方が良いです。

この作品が感動するのは、実は音云々では無く、若い主人公の誠実なひたむきさに有ります。

映画では主人公以外の周囲の若者の真摯な姿にも焦点が当たっています。

ネタバレは避けますが、

実在しない筈なのに、人生に誠実な彼らに、希望ある未来を与えてあげてほしい

と原作者にお願いしたくなります。


最近、近しい人に不誠実なことをされていたことが発覚しました。

元々高慢な所はありましたが、

私たちの前で、奥様や子に道徳を説くこともあるぐらいの男でした。


問題が発覚してからも、虚実を交えて、なんとか籠絡、懐柔しようと

涙ぐましいメールを送ってくれていましたが、

もはや隠しきれないとわかった途端から、プツンと連絡を絶ってしまいました。

問題が大きくなって、ご家族に本性が露呈するのを恐れたのでしょう。

恥ずべきことをしながら、恥辱を受けるは耐えられないと言った所でしょうか?


彼は今、運命の業火に焼かれていると聞き及んでいます。

現実世界でも、ひたむきな誠実さがあれば、

希望ある未来がプレゼントされたかも知れないのに…


そういえば、矢沢永吉も「人を裏切って贅沢しても、決してハッピーにはならない」

みたいなこと言ってたなあ、おーん。


彼も何処かでこのブログ読んでるかも…

君、「足るを知る」って大事なことやで、おーん

(最後は絶好調阪神・岡田監督風。最近ツボです。)





2023年5月13日土曜日

法隆寺3年ぶり2回目

ゴールデンウィークは、近場の奈良辺りでも行こうかと検索した結果、

法隆寺の門前宿に行きつきました。


法隆寺は数年前に一人でぶらりと出かけ、「百済観音」との出会いにビビッときたので、

もう一度お目に掛かっても良いかと思っていたのと、

妻は小学校の遠足以来で、記憶に残っていないとの事だったので、

近いけど、非日常にはなるかと泊まりにしました。


その宿が結構コンセプトが面白く、

前日に名物スタッフによる聖徳太子や法隆寺のプレゼンがあり、

翌朝また別のスタッフが法隆寺を案内して、解説してくれるというものでした。


プレゼンも手慣れたもので非常に面白く、料理も美味しい。

拝観も、斑鳩育ちのハキハキとしたお嬢さんが、

ポイント、史実、主観を織り交ぜた楽しいガイドをしてくれて非常に良かったです。


宿のアンケートに、また来たいですか?という問いがあって、

「絶対に来たい」にチェックを入れたのですが、後で考えると売りが法隆寺だけなので

(もちろんビッグコンテンツではありますが)

そんな毎年というわけにはいかなそうなのが惜しい所です。


あと、連休を利用して髭を伸ばしてみました。

「イケおじ」を目指した無精髭風なのですが、知らぬ間に白髪が増えてて驚きました。

スタッフからは好評なのですが、それだけ髭が似合う歳になってきたということでしょう。


無造作ヘアーが、実は細かい造作を必要とするように、

シェフの気まぐれサラダが、決して気まぐれで出来たわけではないように、

私の無精髭も、残すべきところは残し、剃るべきところは剃ると

毎朝、鏡の前に立って整えています。


ジョリって剃りすぎちゃうまで、しばらくはこのままで行こうかと考えています。

夏場はやめとこうかな…


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